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第73回日本生態学会大会(於:京都大学)にて、「JBON集会:野外観察から始まる自然史研究の未来」を開催しました。
本自由集会では、日本生物多様性観測ネットワーク(JBON)の活動紹介を出発点として、「自然史調査・研究をいかに活性化させるか」というテーマのもと、多様な立場の参加者による議論が行われました。


JBONの活動紹介・議論の全体整理


冒頭で、JBON代表の西廣淳より、近年のJBONの活動について紹介がありました。調査・研究を支える人材育成(キャパシティ・ビルディング)に関する活動などが進められており、組織としての役割も広がりつつあることが共有されました。
また、各都道府県の自然史研究会の概況や、全国で植物調査に携わる人材の年齢構成なども紹介され、この場で議論し合う内容についての整理がありました。



話題提供① 研究者主体の生物多様性長期モニタリングの潮目


 日本国際湿地保全連合(WIJ)の横井謙一から、研究者主体の生物多様性長期モニタリングに関する話題提供がありました。沿岸域や陸水域における長期モニタリングの経験から、種を見つける・見分ける・記録するといった基礎的な作業に対して必要とされるスキルなどが整理され、改めて示されました。こうした調査に対する参加の動機づけが難しい点や、担い手の減少や世代交代に関する話題なども総合討論への話題として提供されました。



話題提供②:カメラトラップによる協働型観測ネットワーク Snapshot Japanについて


国立環境研究所の深澤圭太から、カメラトラップ(野生動物を自動撮影する装置)を用いた協働型観測ネットワーク(Snapshot Japan)の取り組みが紹介されました。大学や企業、NPOなど多様な主体が参加し、データの可視化や共有を進めています。得られたデータやプロトコル(調査の共通手順)は、研究のみならず行政施策にも活用されており、新たな観測手法としての可能性が示されました。



総合討論:人材・参加・育成をめぐって


総合討論では、以下の3つのテーマに沿って議論が行われました。

1.人材減少の原因と現場の課題

司会の西廣からは、生きものに関心を持つ人材が減少しているのでは?という問いかけがありました。しかし、生きもの関連アプリ利用者の増加や生きもの関連のイベントの隆盛など、若年層の活動の活発化から必ずしも一概に減少とは言えないという見方も示されました。
ただし、長期モニタリングや地域の総合的な自然史調査を担う人材は不足しており、特に調査全体をマネジメントできる人材の不足が大きな課題として挙げられました。
また、従来の同好会や地域コミュニティの役割が変化し、分野の細分化や参加形態の多様化が進んでいることも指摘されました。

2.新たな人材の呼び込み方(すそ野の広げ方)

人材の入口として、博物館や学校、書籍、家族の影響など多様なきっかけが共有されました。近年では、スマートフォンアプリやSNSを通じて気軽に生きもの観察に参加できる環境が広がっており、裾野の拡大に大きく寄与しているとされました。
一方で、アプリ利用が観察の代替になってしまう懸念や、実物をじっくり観察する機会が減る可能性も指摘されました。そのため、デジタルツールを入口として活用しつつ、現場での体験や学びへとつなげる工夫が重要であると共有されました。

3.「自然史調査が出来る人」を育てる仕組み

調査ができる人材の育成には、現場経験と専門家との直接的な関わりが不可欠であるとの認識が共有されました。地域の研究者や博物館、大学サークルなどが重要な役割を果たしており、「人から学ぶ」機会の確保が鍵となります。
また、単に種を見分ける技術だけでなく、調査の計画やデータ管理、倫理や情報公開に関するリテラシーの習得も重要であり、学べる場が必要だとされました。
さらに、活動を持続させるためには、適切な評価や報酬の仕組みを整えることが必要であり、無償に依存しない体制づくりの重要性も強調されました。

まとめと今後に向けて

本集会を通じて、自然史調査に関わる人材の入口から育成・活躍の場までを、一体的に新しく整理する必要性が共有されました。今後は、デジタル技術と現場経験を両立させながら、多様な人材が関わり続けられる仕組みづくりが期待されます。