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 2023年10月7日、8日に、兵庫県立人と自然の博物館にて、第15回ミミズ同定実習を開催しました。この実習は、ミミズ研究談話会が主催する企画で、兵庫県立人と自然の博物館と日本生物多様性観測ネットワーク(JBON: Japan Biodiversity Observation Network)が共催として開催しました。
 参加者は約30名で、研究機関や博物館の職員、大学教員、コンサルタント会社の技術者、一般企業の会社員、学生、市民科学者、NGOなど、さまざまな分野から老若男女の参加がありました。ミミズに対する興味も多様で、ミミズ研究の最前線にいる研究者、高校時代からミミズ研究一筋の学生、サルやモグラの餌生物の視点で興味をもつ学生、生きもの好きな樹木医、地域づくりに取り組む会社員など、さまざまな動機と背景を持った方が参加しており、一見さんでも気軽に参加できる大変雰囲気の良い企画でした。




 実習は、ミミズ学の基礎や分類の歴史と最新の分類体系といった専門的な座学から始まりました。ミミズ類の分類形質の少なさや種の記載の歴史に感銘を受け、普段は“ミミズ”としか認識していなかったミミズ類の多様性に衝撃を受ける内容でした。
 一定の基礎知識をつけた後、参加者は一斉に外に出て、皆でミミズ類を採集しました。スコップとチャックポリ袋を持ち、湿り気のある側溝の土をひたすら掘り起こしました。その結果、約1時間で6種288匹(種同定が困難な幼体138匹を含む)のミミズ類が採集できました。採集した個体は水道水で洗浄し、アルコールで麻酔をかけ、ガラス棒で挟んで体を直線にしてホルマリンで固定しました。翌日、直線状にまっすぐに固定された標本を顕微鏡下で観察、解剖しました。外部形態や内部形態を観察し、重要な同定形質の一つである腸盲嚢の形態などを比較して、種の特徴を観察しました。










 実習の最後には、「標本のデジタル化と活用」と題して、生物多様性観測の基礎となる種同定の知識やスキルの重要性、JBONの紹介を含めた発表を三橋弘宗氏が行い、自由な意見交換の時間を設けたのち閉会となりました。
 今回の実習は、再起動されたJBONの人材育成(キャパシティービルディング)部会として初めての企画となりましたが、生物多様性観測の土台となる分類などの基礎知識、採集や種同定に関わる技術の習得と実体験、それらの記録やデータの蓄積が影響を及ぼす政策や国際的なイニシアティブとの関係性までを一つのパッケージとして整備していくことの重要性を改めて感じる機会となりました。
 なお、本実習で採集・同定された6種(フキソクミミズ、ノラクラミミズ、クソミミズ、ヘンイセイミミズ、フタツボシミミズ、メキシコミミズ)の標本の一部は、貴重な自然史資料として兵庫県立人と自然の博物館に収蔵されました。