淡水魚類調査ブートキャンプ@琵琶湖博物館を開催しました
2026年2月7日から8日にかけて、滋賀県立琵琶湖博物館にて「淡水魚類調査ブートキャンプ」を開催しました。本イベントは、生物多様性観測の基礎となるフィールド力やデータマネジメント力の向上を目的とした二日間の集中プログラムで、日本生物多様性観測ネットワーク(JBON: Japan Biodiversity Observation Network)が主催、琵琶湖博物館および国立環境研究所の共催により実施されました。
本ブートキャンプは、現場での生物調査から、生物多様性情報の活用・発信に至るまでを一気通貫で学べることが特徴です。各地で行われる生物多様性観測の維持・発展に貢献する人材を育成し、ネイチャーポジティブ社会の実現に不可欠な生物多様性情報の長期的な蓄積と利活用を促進することを目指しました。
本イベントには111件の応募があり、その関心と需要の高さがうかがえました。抽選で選ばれた20名の参加者は、北は福島県、南は鹿児島県まで全国各地から集まりました。大学・大学院生、専門学校生、環境コンサルタント、水族館職員、クリエイター、NPO職員など、異なる背景をもつ参加者たちは、講義や実習に熱心に取り組み、互いに交流しながら濃密な二日間を過ごしました。
初日の午前中は3つの講義で構成されました。講義1「GBIFへの道」では、地球規模生物多様性情報機構(GBIF)へのデータ登録に向けた基礎を学び、生物調査の成果を国際的に共有する意義を理解しました。参加者は、生物多様性情報の起点がフィールドにあること、そして現場で活動する人々こそが重要な担い手であることを再認識しました。
講義2「淡水魚類学事始め」では、生物の採集記録のみならず周辺環境や景観レベルでの観察の重要性、その記録方法を学びました。さらに、形態観察の基本となる骨格構造や外部形質、発生学的背景に至るまで、魚類学の基礎を体系的に理解しました。
講義3「琵琶湖の魚類の進化史」では、地質年代スケールでの淡水魚類の進化や集団形成について最新の研究知見を学び、生物多様性を時間的視点から捉える重要性を実感しました。
午後は、プラスティネーションのデモンストレーションに続き、採集と標本作製の技術講習を二班体制で実施しました。採集講習では、野外活動前に基礎的な採集技術と生物採集の心得を学び、その後、投網とバケツを手に極寒の野外訓練へ。参加者は水撒きの基本動作を練習した後、網が円形に開くように投げる訓練を繰り返し、熟練者は応用的な投げ方にも挑戦しました。標本作製講習では、まず標本の収蔵庫を見学し、自然史資料が持つ重要性を理解しました。その上で、あらかじめ準備された琵琶湖産の生の魚を使いながらヒレ立て実習を行い、標本写真撮影の基礎を学びました。
二日目の午前中は、カワムツ、ヌマムツ、ドジョウ類などの標本を観察し、追星や側線菅、鰭条、鱗などの形質を実体顕微鏡で観察しました。初日の講義を踏まえ、同定形質の理解を深めながら種の同定作業を体験しました。
午後のデータマネジメント講習では、GBIF登録で使用されるDarwin Core形式の概要や、データ整形ツールの使い方を学びました。Darwin Coreは、生物多様性データ(標本・観察データなど)を共通形式で整理・共有するための国際規格です。今回作製・同定された魚類標本は、貴重な自然史資料として琵琶湖博物館に収蔵され、Darwin Core形式でデータ化のうえGBIFに登録される予定です。
最後に、環境省の生物多様性モニタリング事業(モニ1000)の紹介、およびJBONの活動紹介が行われ、二日間にわたるプログラムは盛況のうちに閉会しました。
プログラム
■2026年2月7日(土)
開会:10:00
座学:10:15〜12:35
講義1:GBIFへの道(海老原 淳 氏, 国立科学博物館)
講義2:淡水魚類学事始め(細谷和海 氏, 近畿大学名誉教授)
講義3:琵琶湖の魚類の進化史(田畑諒一 氏, 琵琶湖博物館)
スキルアップ講習:13:30~17:30(各2時間 入れ替え制)
講習1:投網の投げ方(陸打)
(オイカワ丸 氏、金尾滋史 氏, 琵琶湖博物館)
講習2:標本作製と写真撮影、プラスティネーション
(川瀬成吾 氏, 琵琶湖博物館、三橋弘宗 氏, 兵庫県立人と自然の博物館)
■2026年2月8日(日)
スキルアップ講習:10:15~12:15
講習3:淡水魚類の形態形質の見方と種同定
(細谷和海 氏、川瀬成吾 氏、オイカワ丸 氏、ほか)
データマネジメント講習:13:30~14:30
(三橋弘宗 氏)
情報共有:14:30~15:00
モニ1000事業の淡水魚類調査の紹介(丸山啓太 氏, 日本国際湿地保全連合)
JBONの紹介(西廣 淳 氏, 国立環境研究所)
