JBONについて

日本生物多様性観測ネットワーク

 生物多様性条約が採択されてから、まもなく30年を迎えます。この間、生物多様性に関する科学の発展によって、生物多様性や生態系サービスは社会の基盤であることの理解が進み、その結果、生物多様性の保全と持続的利用に対する社会の認識と制度も進展しました。しかし、国内外における生物多様性の損失に歯止めはかかっていません。2010年には生物多様性保全に向けた愛知ターゲットが定められましたが、目標年である2020年において、60の下位目標のうち88%は未達成あるいは達成度不明と評価されました。また日本の生物多様性及び生態系サービスの総合評価(JBO3;2021年3月)では、これまでの希少種保全や保護地域の管理といった取り組みの効果は認められるものの、生物多様性は回復に向かってはおらず、今後は保護地域以外での保全の推進など新たな取り組みが必要であることが指摘されました。

 国際的には、2015年の国連サミットにおいてSDGsが採択され、生物多様性・生態系の保全の必要性がより広く共有されるとともに、環境問題への対応に積極的な企業への投資などの動きが始まりました。さらに近年、自然災害の激甚化や新興感染症の発生などを背景に、生物多様性の損失を社会・経済のリスクと捉える認識が、急速に浸透しています。2021年6月に行われたG7首脳会合では、日本を含む参加国により、2030年までに生物多様性の損失を回復に転じさせる「ネイチャーポジティブ」な経済を促進することが約束されました。また、企業活動が生物多様性にもたらす影響を評価し、それらの情報を開示するための指標や仕組みの整備に関する議論も進んでいます。近年の日本では、グリーンインフラ、Eco-DRR(生態系を活用した防災・減災)、EbA(生態系を活用した気候変動適応)、さらに包括的な概念であるNbS(自然を基盤とした解決策)など、生態系の機能を積極的に活用する活動への関心が高まり、生物多様性を資源として活用する取組みが活発化しています。

 生態系の恩恵を持続的に享受できる社会を築くためには、生物多様性の状態を適切に観測し、そのデータを生態系の管理者や研究者を含む多様な主体が活用できるよう、情報基盤を整備することが必要です。日本の生物多様性観測は、公的な機関だけでなく、個別の研究者、自然愛好者団体、個人など、さまざまな主体によって行われてきました。現在と未来のニーズに応える情報基盤を築くためには、生物多様性観測に関わる多様な主体の連携が不可欠です。
 JBON*(Japan Biodiversity Observation Network)は、生態系・生物多様性の観測に関する日本国内のネットワークとして2009年に設立され、2009~2014年にはワークショップ等を開催し、情報共有や連携強化が進められました。しかしその後は、集会等の活動は実施されていませんでした。このたび、生物多様性・生態系に関する現代の状況に対応すべく、JBONの役割を改めて明確化するとともに、生態系・生物多様性観測を実施している主体に改めてお声かけし、再出発することにいたしました。

*設立当初はJ-BONと表記していましたが、The Asia-Pacific Biodiversity Observation NetworkがAPBONと表記していることにあわせる形で、今後はJBONと表記することにしました。また、2023年9月22日より、英名をJapanese Biodiversity Observation Networkから、Japan Biodiversity Observation Networkに改称いたしました。




JBONの役割


1.生態系・生物多様性観測主体間の連携の推進

生態系・生物多様性の観測を実施している主体が相互に連絡を取れる体制を構築し、観測を継続するための相互支援などを通し、日本の生物多様性観測の維持・発展に貢献します。

2.生態系・生物多様性情報の公開と利活用の推進

生態系・生物多様性の観測データについて、盗掘・密猟(漁)のリスクに配慮しつつオープンデータ化を進め、情報の有効活用を推進します。また観測を実施している主体と、生態系管理の実務者やデータサイエンス分野の研究者などデータを利活用する主体との連携を促進します。

3.国際貢献

APBONやGEO BONの活動に協力し、アジアおよび世界の生物多様性観測の発展と、生物多様性保全に貢献します。


JBON再出発発起人